コンビニと比べられちゃう
こんにちは、覆面歯科医です。
今回は歯医者さんを選ぶにあたってまずはその実態について知っていただきたいと思います。
「そんなこといいから早く歯医者選びを教えてよ!」という声もあろうかと思いますがどうぞお付き合いください。
歯医者の数と言えばコンビニ!
まずは数の話をしていきましょう。
あなたの近所に歯医者さんは何軒ありますか?
私の周りにも歯科医院は多く存在しています。
歯科医院の数の話になると決まって出てくるのがコンビニの軒数との比較。
『歯医者さんはコンビニより多い』
もう常識となりつつあるこの話。
歯医者をしていると必ずと言っていいほど「コンビニより多くて大変でしょ?」と聞かれます。
これは過去に週刊誌が
『歯科医院はコンビニより多い』
↓
『歯科医師が過剰にいる』
↓
『歯科医院が患者の取り合いをしている』
↓
『患者が少なくなった歯科医師は収入が減っている』
↓
『一部の歯科医師が収入を増やそうと悪いことしてるんじゃないか』
という報道をしたネガティブなキャンペーンによって広まり、
『歯医者さんはコンビニより多い』
というフレーズが独り歩きしてしまったのだと考えます。
コンビニは生活の中で身近な存在としてイメージしやすく、その数だけを単純に比較するといったポイントについてはとても分かりやすい表現であると思います。
多いの少ないの?
では実際には歯医者さんは多いのか少ないのか。
数だけでなく、その中身にも目を向けて考えてみたいと思います。
先ほどでた歯医者さんとコンビニ。
最近のデータを見ると歯科医院の数は68,791軒(厚生労働省 医療施設動態調査 2018年1月末概数)。
そのうち東京都だけでも10,659軒あるとのことです。
対してコンビニエンスストアの数は55,310軒(日本フランチャイズチェーン協会 コンビニエンスストア統計データ2018年1月度)。
歯科医院数 68,791軒 > コンビニエンスストア 55,310軒
確かにコンビニより歯科医院のほうが多いです。
一般診療所、つまり内科、外科、皮膚科、耳鼻科、眼科、整形外科、小児科といった医科の診療所を合わせた数は101,837軒(厚生労働省 医療施設動態調査 2018年1月末概数)となっており、歯科単科で医科複数科合わせた数の7割弱というのは多いように感じます。
しかし、コンビニエンスストアで買い物をするときのことをイメージしていただくとわかると思いますがさっと商品を選んで、さっと買って、お店の滞在時間はそう長くないと思います。
先ほどの統計データをみますと1か月の来客数はなんと約13億人、お客さんが一人につき買い物をする単価は629円でした。
レジで店員さんが一人のお客さんに対応する時間はせいぜい数分といったところではないでしょうか。
一方歯科医院はというと治療で考えた場合、歯科医師とアシスタント(歯科衛生士や歯科助手など)で患者さん一人にほぼ付きっきりで対応し、治療内容にもよりますが1回の治療に30分程の時間をとることが多いです。
これはコンビニでの店員さんとお客さんの関係性とは異なるものです。
また、同じ医療でも例えば風邪をひいて内科を受診した時を考えますと診察して、薬を処方してもらうという治療であれば5分~10分程でしょうか。
私は歯科医院の働き方は美容院に似ていると考えています。
美容院はカットする美容師さんとそれをサポートするアシスタントさんでお客さん一人にほぼ付きっきりで対応しています。時間も大抵30分以上はかかると思います。
ではその美容院の数はというと美容所数237,525軒(厚生労働省 美容院概要)ということで歯科医院よりも多くあります。
美容師さんの数も全国に美容師数496,697人ということで資格を持っていて働いていないという方もいらっしゃるかと思いますが約50万人います。
一方私たち歯科医師の数はというと104,533人(厚生労働省 2016年医師・歯科医師・薬剤師調査概況)。
このうち診療所(一般の歯科医院)に努める歯科医師数は89,166人でした
ここで言いたいのは
「歯科医院より美容院のほうがもっと多いんだから歯医者ばかりコンビニと比べるな!」
ということではなく、その中身の話です。
歯医者さんてこんなところ
先ほど歯科医院は美容院に働き方が似ていると書きましたが、歯医者さんの患者さんと美容院のお客さんにも似ている点があると考えております。
もちろん歯科医院へ行くのはむし歯や歯周病などの歯や口の病気があって困っているからという理由だと思いますが、一方定期的に健診に行く、クリーニングをしに行くといった面もあります。
一般的に医科では病気になったら受診する。
では健診は?
職場や学校、または市町村などの自治体により毎年健康診断を行っている方が多いのではないでしょうか。
美容院はというと髪が伸びてきたら切るという考えですと女性と男性で頻度こそ変わると思いますが定期的に行くところと言えます。
歯医者でいう歯石が着いてきたら取るという考えはどちらかというとこれに近いと思います。
つまり歯科医院は医科診療所と美容院のそれぞれの患者さん・お客さんの特性が合わさった独特の施設ということができるのではないかと思います。
日本ではまだまだ『歯医者さんは歯が痛くなったら行くところ』という考えの方が多いので、その考えで医科と比べると数が多いと思われてしまいます。しかし、『悪くならないように定期的にチェックとお手入れをしに行くところ』という視点で考えると美容院と比べてそう多くない数ではないかと思っています。
日本は歯医者さんへは悪くなってから行く方が多いのですがヨーロッパやアメリカでは歯医者さんへは『悪くならないために行く』という考え方が一般的で何はなくとも定期的にいく方が多くいます。
そんなこともあってか日本では人口10万人に対する歯科医師数は82.4人 (厚生労働省 2016年医師・歯科医師・薬剤師調査概況)に対して、アメリカは人口1,000人に対する歯科医師数は1.64人(WHO 2017年)とありました。
同じ割合にしますと日本は人口1,000人に対する歯科医師数は0.84人なのでアメリカの1.64人の約半分。
日本の人口1,000人に対する美容師数3.91人と比べるとそう多すぎるということはないと思っています。
まとめ
・日本に歯医者さんは約6万9千軒ある。
・『痛くなったら行くところ』としては数が多く、『悪くなる前に行くところ』としては多くない。
・『歯医者さんはコンビニより多い』という数だけの話に惑わされないで!
結論
「歯医者はコンビニより多いから選ぶのは大変だ」と先入観を持たず、しっかり内容で歯医者さんを選べるように心がけましょう!
これが私なりの「歯科医院・コンビニ問題」(勝手に命名)の答えです(笑)
とは言え全国69,000軒ある歯医者さんから自分にあった1軒を選ぶのは簡単なことではですよね。
次回は歯医者さんを何で選ぶかについてお伝えしたいと思います。