歯医者さんの検索予約サイト
こんにちは、覆面歯科医です。
前回、歯科にも検索予約サイトがあるという内容を書きました。
飲食や美容といった分野で言う『食べログ』、『ホットペッパービューティー』のようなサイトで歯科の大手として『EPARK歯科』があります。
歯医者さん選びをするのに簡単で便利と思われるこちらの検索予約サイトですが、医療には飲食や美容とは同じように扱えない問題があるのです。
そこで今回はこの歯科医院の検索予約サイト『EPARK歯科』についてお伝えしようと思います。
どんなサイト?
『EPARK歯科』のサイトでは前回『食べログ』や『ホットペッパービューティー』を参考にして歯科医院を選ぶ基準として考えたカテゴリで挙げたような内容で検索できるようになっています。
具体的には[エリアから探す]、[治療内容から探す]、[ネット予約:ネット予約空き状況]、[診療曜日]:土曜診療、日曜診療、祝日診療、[診療時間]:18時以降、20時以降、[施設情報]といった項目から検索できるようになっています。
また、各歯科医院の紹介ページには『食べログ』や『ホットペッパービューティー』と同じように♡の数で評価がされていて、口コミなどで比較できるようになっています。
もちろん歯医者さんを選ぶ方にとってこのような検索予約サイトはとてもありがたいと思いますが、実はこれでいい歯医者さんが選べるかというと甚だ疑問に感じてしまうところがあります。
医療としての特性
そもそも飲食・美容・医療と並べたとき、飲食・美容と医療については同じものとして扱えない事情があるのです。
どういうことかと言いますと厚生労働省が設ける「保険医療機関及び保険医療養担当規則(以下「療担規則)」という規則で保険医療機関の「経済上の利益の提供による誘引の禁止」というんものがあるのです。
これは簡単に言うと『歯医者さんはお金を渡したり、割引のサービスをして患者さんが自分の医院に来るようなことをしてはいけません。』ということです。
この規則により歯医者さんは検索予約サイトにお金を払って患者さんを自分の医院に呼んではいけないことになっているのです。
ここで注意するのはこの規則は『保険診療を行う上での規則』という条件であるので、すべての歯科医院に対しての規則ということではなく、保険医療機関に対して適応されるということです。
つまり「保険治療を一切取り扱わず、すべて自費治療だけです」という歯科医院については問題ないのですが、実際ほとんどの歯科医院は保険診療を行う施設として届け出ているため、その多くはこの規則が該当する医院といえます。
「え、じゃあこれ使って歯医者行ったことがバレたら捕まるの?」
いいえ、これを使ったからと言って患者さんは捕まりも罰を受けたりもしません。
「よかった。じゃあ、この検索予約サイトの会社に罰則があるの?」
いいえ、サイトはサイトで運営して問題ないようです。
「それなら問題ないね!よかった。」
実はこれを利用して患者さんが来た歯科医院には問題があるのです。
今のところ前例はなく、現実的にはまだそこまで厳しい取り締まりではないのですが厚生労働省が決めている規則なのでそれに違反すると指導や監査となったり、それに従わない場合や悪質であると判断されてしまった場合には最も重い処分としては保険医療機関としての登録を取り下げられてしまうことも可能性はゼロではないのです。
これは歯科医院として保険治療ができなくなってしまう可能性があるということです。
「使う側に罰とかデメリットがないなら別にいいんじゃない?」
ちなみにこの検索予約サイトに歯科医院を登録する場合は登録料として年会費を払い、また患者さんがこのサイトから歯科医院へ電話やネット予約を行った場合、1件当たり2000円~3000円のサービス料という名の紹介料を払う仕組みになっています。
金額は契約によって異なるのでさらに安い場合もありますが一般的にはこのくらいのようです。
1回3000円!と驚くころ勿れ、確実にきた患者さんの紹介料ではなくそのサイトから電話がかかってきた時点で1カウントなのです。
患者さんが予約ではなく、相談で電話をかけて「とてもよくわかりました。ご丁寧にありがとうございました。」これでチャリーン。
どこかの業者さんが「〇〇という会社なのですが院長先生いますか?」これでもチャリーン。なのです。
また、最近は電話より便利な予約方法としてネット予約が一般的ですが、こちらもネットで予約した時点で1カウント。
ネットで「行けるかビミョーだけどとりあえず予約だけは確保しておこう。んで行けなかったらキャンセルしよう。」と取った予約でもチャリーン。
キャンセルになってもお金は返ってきません。
というように歯科医院側は純粋に患者さんが来院したら紹介料を払うということではなく、登録している限り余計な部分にも使用料を払い続けていかなくてはならないシステムなのです。
そして、それによって払ったお金は巡り巡って患者さんの治療費から頂かなくてはなりません。
「ふーん、じゃあEPARK歯科を使わないようにしよっかな。」
そのように思っていただけたとしてもこのEPARK歯科の予約システム、なかなか手ごわいのです。
現在インターネットから歯科医院を探そうとしたら避けるほうが不可能と言っていいほど至る所にその手が及んでいます。
私たち歯科医院側の知っている人間がよほど気を配って見ない限り、インターネットでこの業者を避けることはできないほどなのです。
Googleで『エリア・駅名』と『歯医者』と入れたら真っ先に出てくるのがEPARK。そして、それを避けて下の『おすすめ歯科医院〇〇選』みたいなまとめサイトもEPARK。『評判の歯医者さん〇選』の紹介もEPARK。「あ、名前の違うサイトだ。これなら…」はい、これもEPARK。
なかなかの包囲網です。
歯科医院がホームページを持っていてもインターネット検索で表示されるのはEPARK歯科のほうが上位であることにより実際に利用する患者さんが多いことから登録する医院さんも多いというのが実際のところです。
実は私も...
何を隠そう私自身も現在はそちらの世界から足を洗いましたが過去にこのEPARK歯科と悪魔の契約を行い、登録してサービス料という紹介料を払っていたことがあります。
経験しているから言えますが進んで利用したいと思っている歯医者さんは少ないと思います。私はやめてよかったと思っています。
私の周りにも登録している歯医者さんはいて、「もうやめたら?」という話になると「それでも患者さんは来るからやめるにやめられないんだよ。」、「ほかの歯科医院みんなが一斉に辞めたら確実にやめるよ」と核を保有している国が言うことみたいになっちゃいます。
他の歯科医師の方のご意見
今回のテーマについては歯科医師はてなブロガーのspeeさんがとても詳しく説明してくださっており、
(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集
「EPARK歯科、これステマですよね?」
https://spee.hatenablog.com/entry/2016/11/25/165446
をリンクさせていただきます。
私の中では勝手にSpeeさんは『EPARK歯科と戦う歯科医師』であるという認識です(笑)歯科医師としてブログを書いていくために影響も受けており陰ながら応援させていただいております。
また、歯科医師である松岡 周吾さんのブログでも書いてくださっているので
1Dニュース
「使ってはいけない、EPARK歯科」
をリンクさせていただきます。
こちらのブログも患者さん視線でもわかりやすい内容になっていてとても参考になります。
まとめ
今回は歯科医院の検索予約サイトについて取り上げてみました。
ではEPARK歯科に登録している歯科医院が悪い歯医者さんかというと必ずしもそんなことはありません。
良い医療やサービスをしていてそれを多くの患者さんに提供したいという気持ちで、患者さんが来るきっかけとなる間口を広げけているということもあります。
ただ、確実に言えることとしてはEPARK歯科に登録している医院はEPARK歯科にお金を払っているということです。
それが良いこと、悪いことということではなく、事実お金は払われていてそれは歯科医院の利益から払われているということであり、患者さんが何らかの形で負担しているということです。
残念なことにEPARK歯科の口コミはあまり参考にはなりません。
そしてお金を多く払う歯科医院が検索されやすい仕組みになっているのでいい歯医者さんが見つかるサイトではなく、『EPARK歯科にお金を多く払っている歯科医院を探しやすいサイト』ということです。
広告にお金を多く払える歯科医院はそれだけ利益が多い、たくさん患者さんが来ている歯医者さんという意味では、これもいい歯医者さんを見つける判断材料の一つになるかと思いますが一概にそれだけで判断することは難しいでしょう。
そして療担規則のことは知っていてそれでも登録して利用している歯科医院さんについて厳しい言い方をすると歯科医院として守らなくてはいけない法律や規則のうちの一つを守れない医院であると言えます。
偉そうなこといってお前もやってたじゃん。
はい。私は恥ずかしながら知識がなく新規の患者さんの予約が入りやすくなる手段としてEPARK歯科に登録しておりましたが、それを止めたのは規則違反になると知ったからが主な理由です。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉もありますが、赤信号でみんなが止まるようなクリーンな歯科業界になってくれることを願っています。
おまけ ~歯科にかかわらず~
また、歯科の検索予約サイトのシステムについて書きましたがこれは『食べログ』、『ホットペッパービューティー』に登録する飲食店や美容院などの美容に携わるお店側の方からすれば「お金払ってるところがサイトで見つかりやすいなんて歯科だけじゃないし、同じだわ!」というご意見もあると思います。
もちろん医療と異なり、飲食や美容では規則に違反するといったことは一切ないのでシステムのお話だけです。
普段お店検索で利用している利用者側としても単に検索して予約しやすいからというだけでなく、お店側の『いいお店にしよう』、『たくさんお客さんに来てもらおう』という努力をしっかり受け止めていかなければいけないと改めて思いました。
今回は検索予約サイトについてでしたが最後にお店側(医院側)の気持ちとして「ウンウンウン」と大きく首を縦に振りながら読んだ漫画がありますのでこちらをご紹介します。
歯医者とは全く関連ありませんがワインをテーマにした漫画で
「マリアージュ 神の雫・最終章」(作 亜樹 直、画 オキモト・シュウ)
という作品で、
10巻#88「グルメサイトの落とし穴」という回から12巻#105 「同郷のふたり」という回
までのお話が今回のテーマの裏側を知るのにとても参考になり、内容もとても面白かったのでご紹介します。
私は作品中で飲食店のオーナーの方が言う
「(グルメサイトの)クーポンは 言い方悪いけど麻薬みたいなものなんです」というセリフにズキンときました。
本当はやめたいけどやめることが難しいという気持ちとして的を得ているなと思いました。
検索予約サイトに登録することの代償や葛藤がリアルに表現されていると思います。
ご興味がありましたら是非読んでみてください。
ご覧いただきありがとうございました。
次回よりカテゴリ別で歯医者さん選びの内容に進めていきたいと思いますが日本の歯科医療について考えるにあたり、切っても切れないものが保険診療です。
そこで次回はまず保険診療についてお伝えしたいと思います。