覆面歯科医がこっそり伝える「歯医者さんの選び方」

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そもそも保険治療って何?

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こんにちは、覆面歯科医です。

 

今回は保険の治療についてお伝えしたいと思います。

日本において医療と保険はとても密接な関係にあります。

 

多くの方にとって普段の生活では病院に行くときに触れる程度であまり馴染みのない話かと思いますが、いい歯医者さんを選ぶにあたって知っておくと良い、というよりは知らなくてはならない内容であるかと思います。

 

「なにやら保険の難しい話が始まりそうな気配がする…」

 

とは思わず、私が勝手に作った物語から保険治療について患者さん側の考え方と合わせて歯医者さん側の考え方についても知っていただければと思います。

 

題して「ホケン物語」()

 

物凄くつまらなそうなタイトルですが今回から数回に渡ってこの物語をお送りして保険についてお伝えしたいと思います。

 

ホケン物語 第1章 ホケンのはじまり

昔々、あるところに小さな貧しい国がありました。

その国は他の国との戦争に負けてしまい、国民みんなが貧しくて元気がありませんでした。

 

食べる物も十分にありません。

 

国の偉い人たちはもう戦争をするのはやめて、この国を豊かで元気な国にしたいと思っていました。

 

そのためにも国民みんなにいっぱい働いてもらいたいと考えていました。

 

しかし、この国には貧しくてごはんを食べることすらできない人がたくさんいました。

 

国の偉い人たちは考えました。

 

「国民みんなが元気になるように、みんなにごはんを食べさせてあげる方法はないかな。」

 

「それならみんなが自分で払うお金を少なくできるように税金で負担してあげたらいい。」

 

「それはいい。そうしよう。」

 

国はそれに『ホケン』という名前を付けて、その国の飲食店にこう知らせました。

 

「これから国が認めたお店はホケンで食事を提供すると料金の7割を国が負担します。」

 

国民からは保険料を集めて、みんなにホケンカードを配り、こう知らせました。

 

「これからはホケンカードを使うと決められた食事が7割引きで食べられるようになります。」

 

飲食店は国からこうも言われています。

「ホケンの食事はメニュー、材料、レシピはこちらが指定する決まったもので作ってください。値段も決まっています

 

ホケンのカレーライスは200です。

じゃがいも玉ねぎ鶏肉カレールーだけで作ってください。

ホケンカードを持っているお客さんからは60円をもらい、残りの140円は後で申請したら払います。

 

焼き魚定食は300です。

魚はイワシです。ごはんお味噌汁をつけてください。お味噌汁の具はわかめだけです。

これもカードを持ったお客さんからは90円をもらって、残りの210円はあとで払います。」

 

あるカレー屋さんは言いました。

「うちは牛肉を使ったビーフカレーがおいしくて評判なんです。」

 

国の人は言いました。

「それはホケンのカレーライスでは認められないので申請しても210円は払えません。でも自分のお店で自由に材料や値段を決めて出していいですよ。」

 

また、ある定食屋さんも言いました。

「うちはサバの塩焼きがおいしくて評判なんです。」

 

国の人は言いました。

「それも自分のお店で値段を決めて、お客さんからお金をもらってください。」

 

ホケンカードは国民全員が持っています。

 

おなかを空かせた国民は安く食事ができることに大変満足しています。

 

飲食店もおなかが空いてもごはんを食べられなかった多くの人々に食事を提供できて、喜んでもらえるのでとてもうれしく思っています。

 

ただ、これまでカレーライスや焼き魚定食は多くのお店が500円前後で出していたのでそのままでは赤字になってしまいます。

そこで飲食店はホケンの食事を決められた値段の中でも赤字にならず、そしておいしいものを出せるようにいろいろと考え、努力しました。

 

皆さんならどのような工夫をしますか?

 

ある店は

「材料費を減らせるように野菜や鶏肉を少しでも安く仕入れよう!」と考えました。

 

また、ある店は

「ホケンではないけどビーフカレーを食べてもらった利益があるからホケンのカレーライスは少ない利益で提供しよう!」

 

中にはこんなこだわりの店主もいるようです。

「うちはこだわりの和食をコースでゆっくり食べてもらいたい。だからホケンの焼き魚定食はメニューに載せないことにしよう!」

 

お店によってやり方はいろいろです。

 

そんなお店の努力もあり、もともとこの国に少なかった飲食店にはホケンのごはんを求めて朝から行列ができるようになっていきました。

 

しかし、このホケンという素晴らしい制度で食事ができるようになってきたころ、この国ではいろいろなことを思いつくお店が出てくるのでした。

 

続く

 

 

今回のあとがき

みなさんは物語を読んでどんなお店がいいお店だなと思いますか?

もしあなたがお店の人ならどのようなお店にしますか?

もしあなたがお客さんならどのようなお店で食事をしたいですか?

答えは人それぞれ違うと思います。

これからいい歯医者さんを選ぶにあたって、この物語で『自分にとっていいお店を探すこと』がひとつヒントになると思います。

 

日本では

さて、話は現実の世界に戻って日本の保険についてのお話です。

それまでにもあった法律に加え、低所得者でも十分な医療が受けられるようにするため1958年に新しい国民健康保険法が成立します。

 

現在の日本の保険による医療はこの約60年前のものが基になり、時代とともに少しずつ変わってきました。

今では当たり前になった保険治療ですがもともとは憲法にもある

『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。』という考えがベースにあるのだと思います。

 

したがって保険治療は最低限度の生活をする上で必要な健康状態にすることが目的であって、最高レベルの健康になるためのものではないことを頭に置いておく必要があります。

 

よく患者さんからも「保険の治療って良くないの?」と質問されることがありますが、

 

「この国に住む人がお金のあるないに関わらず誰でも一定水準以上の治療を受けることができるというシステムはとても良いことです。ただ、1本の歯、一人の人間にとっては最良の治療法ではないこともあります。」

 

というのが私の答えです。

国としていい治療と個人にとってのいい治療は分けて考えなくてはなりません。

 

ご覧いただきありがとうございました。

次回もホケン物語の続きから歯医者さんと保険についてをお伝えしたいと思います。