保険診療のいま
こんにちは、覆面歯科医です。
前回は歯科医療における衛生管理、感染対策についてのお話をさせていただきました。
これまでに日本の歯科医療における不正請求(付増請求)、無資格医療行為、衛生管理・感染対策についてお伝えしました。
保険診療による恩恵と、保険診療を行うがゆえに起こってしまったことについてお伝えしてきましたが今回は現代とそしてこれからの歯科の保険医療についてお伝えしたいと思います。
ホケン物語 最終章 ホケンのこれから
ある小さな貧しい国で始まったホケンという制度。
この国では決められた内容のお食事を決められた料金で提供し、一部を国が負担することで国民の誰もが食べることに困らないようになりました。
この国ではホケンという制度が始まって約60年の月日が経ちました。
とても貧しかったこの国は、国民が一生懸命に働いたことで経済的に豊かな国になっていきました。
もはやホケンが始まったころのように貧しくて食べるものに困る人が大勢いるということはありません。
電化製品のある家に住み、車を持って、いい洋服を着て、いい時計をしているという人も珍しいことではなくなりました。
旅行にも行きます。
しかし、ホケンの制度は大きくは変わらずまだこの国にあります。
時代に合わせて少しずつ変わってはいますがほとんど始まったころのままです。
今この国に暮らす人々の多くは生まれたときからホケンがあり、それは当たり前のように生活の中にあります。
誰もホケンについて深く考えることはなく、外食をするときはホケンで食事をとるのが当たり前になっています。
そしてホケンを提供するお店では不正な請求がある、無資格で調理をしている、衛生管理ができていないといったことはまだまだ完全になくなっていないのが現状です。
一部のお金持ちの人やお祝いなど特別な時にホケンではない食事をする人がいますが、まだまだホケンが多くを占めています。
貧しさを理由に食事がとれないことがないように『最低限の生活をする上で必要な健康状態にすること』を目的として始まったはずのホケンは時代が変わった今ではこの国のスタンダートとして国民に根付いているのです。
これが最低限のラインであるということはほとんどの人たちが気づいていません。
この国にはホケンでは食べることができませんがおいしい料理がたくさんあります。
ホケンが始まったころにはなかったような新しい食材や料理方法もたくさん出てきています。
お店の人たちはそんなおいしいものをより多くの人に知ってもらい、食べてもらいたいと思っています。
ホケンが始まり約60年がたち、さらにこれから先、この国の保険はどのようになっていくのでしょうか。
多くの人がホケンについて本当のことを知り、それぞれの料理についてきちんと理解した上で自分に合った料理を選べることが本当に幸せなことです。
そして、もちろん不正を行うお店も減り、クリーンなお店ばかりになっていくことが望ましい世の中です。
将来、お客さんもお店もみんなの考え方が少しずつ変わることでこの国の人々はさらに健康で豊かな暮らしができるようになっていくことでしょう。
終わり
あとがき
現在の保険診療は1958年、今から約60年前のものが基となっています。
当時『最低限度の生活をする上で必要な健康状態にすることが目的』として考えられたものです。
保険の医療費は国の税金から賄われており、国の予算として決められています。
税金であるためなるべく低く抑えられるのも当然です。
今後歯医者さん選びについて考えていく中で知っていなければいけないこととして始めた保険診療についてのお話ですがその最後となる今回は現代の歯科保険診療についてお伝えしたいと思います。
現代の歯科保険診療
60年前と現代では当然社会は変わり、当時と今とでは多くのことが変わっています。
歯科の保険診療をイメージしやすいように、生活の身の回りの物で考えてみます。
保険と同じように最低限度の生活をする上で必要な状態にすることが目的とするとした場合、
例えば保険で国民に腕時計を提供するのであれば時間だけがわかる腕時計となるでしょう。
ストップウォッチ機能にタイマー機能、防水性、デザイン。手巻きや自動巻き。これらの機能などは一切なく、ただただシンプルに時間だけわかればいいのです。
何年と長持ちする上部な材料で作られた耐久性もなく、壊れたらまた同じものを与えるといった感じで、プラスチック製の100円ショップで手に入るようなデジタルウォッチといったところでしょうか。
保険で国民に傘を提供するのであれば最低限雨がしのげれば良い傘となるでしょう。
大きさ、デザイン、十分な耐久性はいりません。プラスチックとビニールで作った最小限の大きさの傘といったところかと思います。
この例えからもわかるように日本の歯科の保険治療、特にむし歯治療で使用する詰め物や被せ物といった材料を伴う治療についても同じようなことが言えるのです。
詰め物などはただ最低限、元の歯の状態に近づけるだけのもので、見た目、耐久性、再びむし歯になってしまう要素などは加味されていません。
ただ安く、最低限の状態がクリアできていれば良いという考えであることをご理解いただければと思います。
(金属の値上がりによりただ安いという理由で使われた材料が高くなっているのですが、これはまた別の話で…。)
もちろんこれは知識、技術などによってそのレベルは一定ではありません。
保険でも良い状態にすることだって可能です。
これは保険の治療が良い、悪い、保険外の自費の治療が良いという話ではなく、そういうものなのだという話です。
洋服にこだわって、靴にこだわって、鞄にこだわって、時計にこだわって、でも体の一部となる歯にはこだわらず、といった方もいらっしゃいますがこれはおそらくこの現状を知らずに保険の治療のものがある程度のものと認識しているからではないかと思っています。
「歯医者は保険じゃなくて自費の治療を勧めて金儲けばかり考えている。」と思われてしまいますが現状を知っていただいて、あとはご自身で選んで決めればそれでよいと思います。
歯医者さん選び
今後[エリア]、[治療内容]や[設備、環境]、[治療]、[サービス]、[雰囲気]、[治療費]、[オプションメニュー]といった項目について歯医者さん選びの話を書いていこうと思います。
その前にまず、歯科を提供する側である私と患者さんとなる皆さんが保険診療について同じ感覚でないと今後お伝えしていく内容にも“とらえ方のズレ”が生じてしまうと思い、それを防ぐために保険診療やそれによって生じている問題についてお伝えしてきました。
日本の歯科治療を考える上でとても重要となる保険診療について皆さんに本当のことを知っていただきたかったのでこれまで保険の話を長々とさせていただきましたことをご理解いただきたいと思います。
まとめ
今回で最後となりました『ホケン物語』ですがいかがでしたでしょうか。
日本の歯科医療と保険診療がどのようなものであるかを少しでもわかっていただけたら幸いです。
いい歯医者さんを選ぶにあたり、設備、環境、治療、サービスなどなど選ぶポイントは多くありますが、まずはその前に、スタート地点に立つ前のこととして、不正請求、無資格医療行為や衛生管理・感染対策といった部分についても考えたうえで歯医者さんを選んでいただければと思います。
決してそういった歯医者を選ぶなということではありません。
・飲食店でも多少会計が不透明でもサービスや味が良ければいい
・お店や食器が多少きれいではなくたっておいしければいい
という方がいるように選ぶのは皆さん自身です。
ただ、『知らずにいるとお金や健康において損をすることなので知っていると得ですよ』というお話です。
今後歯医者さん選びについてもいろいろ取り上げていきますが『こういうほうがいいです』というお話は極力せず、その項目についてのメリット・デメリットなどについてお伝えし、選ぶのは皆さんであるということを念頭にこのブログを続けていきたいと思います。
歯医者さん選びについて取り上げてほしい内容などありましたらご意見お待ちしております。
今回もご覧いただきありがとうございました。
では今までお伝えしたことをもとに次回からいよいよ歯医者さん選びについてお伝えしていきたいと思います。